2020年12月28日月曜日

芸能人(ウーマン村本氏)を利用して汚染水の海洋投棄に誘導しようとする姑息 2020-12 #1

 ヤフーニュースで以下の記事を見つけた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7127621377b9835bef06a924e7819385a4448c29?page=1

私はウーマンラッシュアワーと言うコンビもウーマン村本も一度も見たことはないが、この記事からは村本大輔氏の福島への思いと彼の純粋さが伝わって来る。

その部分を下記に引用する。

--------------------------------------------------------------------------------------------

”村本さんは「俺、心配なことがあってね。いま、処理水の海洋放出の検討が進められている。国の人たちは安全って言う。木野さんの説明を受けて、人体に影響ないのも理解はした。政府は全漁連が納得したら海に流すのかもしれないけど、それは違うんじゃないか。本当にすべての漁師さんが納得したのか。不安に感じているけれど、漁連の大きな声に押しつぶされて言い出せない人がいるかもしれない」と話し始めた。 木野さんは「不安に感じる人の声を無視はできない。でも、これはいつか誰かが決めなければいけない問題なんです」と応じ、「私にできることは、原子力を学んだ者として、安全なものは安全と言い続けることです。そうじゃないと、福島のためにならない」と強調した。 村本さんは「誰かが犠牲になって、この国は成り立っている。沖縄が犠牲になって、俺たちの安心が成り立っている。俺が総理だったら、処理水飲むね。他人に何かを強いるのであれば、自分も何かの犠牲になって、誰かを安心させなければいけないと思う」と言った。 そして、「俺、飲みますよ、カメラ回ってる前で、勝手に。おなか壊すよりも、それが漁師さんのためになるんだったら。村本が勝手に飲んだってことにして良いので、どうですか、木野さん」と続けた。 木野さんは「もし飲んだら人類初です。管理責任を問われて私のクビは飛んじゃいますね」と笑った。”

--------------------------------------------------------------------------------------------

ただし、彼にそのように思わせたやり取りがその前段にある。

--------------------------------------------------------------------------------------------

”東京から新幹線と車で約4時間。免許証の確認や指の静脈認証など厳重なセキュリティーチェックを終えて構内に入ると、案内役の資源エネルギー庁の木野正登廃炉・汚染水対策官(52)が、350ミリリットルほどの小さなプラスチック製の容器を示し、「これが原発処理水です」と説明を始めた。 木野さんは東京大学で原子力工学を学んだ後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。原発事故直後に福島に赴任し、事故の収束や廃炉作業に関わり続けている。 第一原発では、敷地内で増え続ける処理済み汚染水の処分が大きな課題となっている。敷地の制約から、水をためるタンクが満杯になる時期は「2022年秋ごろ」とされ、政府は処理した汚染水を海に放出する方針だが、風評被害を懸念する全国漁業協同組合連合会(全漁連)など漁業者の反発は強く、処分方法の正式決定は先延ばしされている。 木野さんがボトルに線量計を向けた。村本さんが鋭い目つきでにらむが、針はほとんど動かない。 木野さんが「変わんないんです。処理水は、人体に影響を与えるガンマ線が出ていないんですよ。トリチウムは残っているけど、人体に与える影響は無視できるくらい小さいんです」と説明すると、村本さんは「これ、飲めるんですか?」と尋ねた。 「放射性物質の影響は無視できるくらい小さい。ただ、大腸菌などの雑菌がいるので、おなか壊しますよ」と答えると、村本さんは「国の側からすると、安全なものを、金をかけてため続けている?」とさらに尋ねた。 木野さんは「タンクは一つ1億円ですから。処理水タンクが1050基あるので、これだけで1050億円。敷地もあと2年ほどで満杯になるとされている」と答えた。 木野さんが処分方法について、「今、政府が地元自治体や漁師さんたちのもとを回り、説明しています。でも最後は、国の責任で決めるしかないんです」と話すと、村本さんは「安心と安全か。難しいなあ」とうなった。”

----------------------------------------------------------------------------------------------

問題はこの部分である。

”「変わんないんです。処理水は、人体に影響を与えるガンマ線が出ていないんですよ。トリチウムは残っているけど、人体に与える影響は無視できるくらい小さいんです」”

わざわざ処理水に線量計を近づけてガンマ線が出ていないことを見せ、”人体に影響を与えるガンマ線”という表現でガンマ線が出ていなければ安全であるかの如く錯覚させる。巧妙なやり口である。

私はトリチウムが人体にほとんど無害であると言う主張は信じていない。電子線を出す以上それが体内に入ればDNAは当然傷つけられるはずである。体内に入ったトリチウムを化学反応の過程で栄養成分に取り込めば、言われるように人体を素通りするのではなく、さらに長時間体内に留まる事になる。トリチウムの半減期は12年。12年経っても半分になるだけである。

増してや、同じくベータ線(電子線)のみ放出してガンマ線を放射しないストロンチウム90が安全であると思う人はいない筈である。

また以前の投稿(2020-11 #1, https://yoshisato.blogspot.com/2020/11/2020-11-1.html)で書いたように、現在のシステムではストロンチウム90や炭素14が処理水から除去しきれずに残っている。この記事の処理水にもストロンチウム90や炭素14が高濃度で残っていたと考えるのが自然である。

流石にこの相手の人も村本氏にストロンチウム90を飲ませるだけの度胸はなかった様子である。

このような記事が広く読まれると、福島の処理水が安全であるという認識が読者の潜在意識に刷り込まれ、世論を海上投棄容認に誘導するよう働くことは容易に推測できる。

ふと思い出したのだが、福島の原発事故から程なく、原発の処理水を飲むパフォーマンスをやって見せていた国会議員がいた。あの人今も無事なんだろうか?

あの手この手で汚染水の海洋放出に持ち込もうとする政府の姿勢がいじましい。


2020年11月2日月曜日

原発処理水の危機は目前にある。トリチウムだけでは無かった。2020-11 #1

グリーンピースから福島の原発処理水に関するメールを受け取った。
私は、これまで政府の発表を真に受けて処理水に関する問題はトリチウムが主であると思って来た。先のブログ(2020-09 #1)では他核種の残存にも触れながら、熱塩循環への押し込みを提案した。

しかし、グリーンピースの報告書を読むと事態はもっと深刻で切羽詰まっていることが分かる。

そこには日本政府と東電がトリチウム以外のさらに危険な核種が残存していることを承知の上で海洋に放出する積りであった事が指摘されている。人の命よりも経済性を重視する姿勢である。

しかも、10月末の決定は延期したが、11月中には決定したいと言っている。事態は切迫していると言わざるを得ない。

抄訳は以下のURLで読めるが、かなり長いので、事の深刻さを理解してもらえるよう何か所かのキャプチュアも載せた。(拡大して見る事も可能。)

是非一読の上、拡散して猛毒の海洋への放出に対する反対運動に協力していただきたい。

ピュロライト社の技術の採用を検討する事も強く求めていかねばならない。

ピュロライト社の技術でトリチウム以外の核種が除去出来れば、トリチウムまで除去しようとすると非常に高くなるので、そのあと陸上処理を選択するか熱塩循環への押し込みを選択するかは国民の判断である。

https://storage.googleapis.com/planet4-japan-stateless/2020/10/ba82306e-radioactivewater_jp_fin.pdf





2020年10月27日火曜日

原発は海を温める!?_その5 Nuclear power warms the sea !?_No. 5 2020-10 #1

さていよいよ本題の、原発が海を温めているかどうかの検討であるが、前回(その4)で述べた対馬海流の各海域への影響を念頭に書き進めて行きたい。

前々回(その3)に掲載した図の一部を、重複するのを承知で、下に示す。

日本海中部と対馬海流の上流部分である日本海南西部の温度変化を比べると、押しなべて見て1970年から2010年までの40年間の温度上昇がこの100年間の温度上昇の差を作っている事が読み取れる。

日本海南西部と東シナ海北部を比べた時、日本海南西部での1970年から2010年までの40年間の温度上昇がやや大きいように見えるが、年次変動が大きくはっきりした傾向は読み取りにくい。

実は、海水面の温度の測定がその海域のどの場所で何か所測られたものであり、どのように平均値を得たものかは皆目分からない。しかし、一応海域全体に均等に分布した地点で測定されたものであるとすると、下記のような推測が成り立つ。

原発からの排水が海水面の温度上昇に寄与しているとすると、先回書いたように、日本海中部での温度上昇の傾向は海域の西側に戻ってくるまで保持される。

一方日本海南西部への原発の排水の影響は殆どが福井沖と石川沖で、影響を受ける観測地点の数は限られていると考えられる。

そのように考えると、島根・福井・石川・新潟の原発からの排水が日本海中部の海水面の温度を日本海南西部よりも2010年(2011年)まで上げていた可能性は十分にある。

Now, let's move on to the main subject of whether or not nuclear power plants are warming the ocean.

A part of the diagram that was published in the previous (Part 3) is shown below, knowing that it is duplicated.

Comparing the temperature changes in the central Sea of Japan and the southwestern part of the Sea of Japan, which is the upper reaches of the Tsushima Current, it can be read that the temperature increase during the 40-year period from 1970 to 2010 makes up the difference in temperature increases during the last 100 years.

When comparing the southwestern Japan Sea and the northern part of the East China Sea, the temperature rise in the southwestern Japan Sea during the 40-year period from 1970 to 2010 appears to be slightly larger than that in the northern part of the East China Sea, but it is difficult to read a clear trend due to large annual variations.

In fact, the measurements of sea surface temperature were taken at several locations in the sea area, so it is not clear how the average value was obtained. However, the following conjecture can be made if the measurements were taken at evenly distributed points in the entire ocean.

If the effluent from the plant is contributing to the rise in sea surface temperature, the temperature rise trend in the central Japan Sea will continue until it returns to the west side of the ocean, as I wrote earlier.

On the other hand, the influence of the plant's drainage to the southwest of the Sea of Japan is mostly off the coasts of Fukui and Ishikawa, and the number of observation points affected by this phenomenon is considered to be limited.

This suggests that effluent from the Shimane, Fukui, Ishikawa, and Niigata plants may have raised sea surface temperatures in the central Japan Sea to a higher level in 2010 (2011) than in the southwestern Japan Sea.

Translated with www.DeepL.com/Translator (free version)

Some corrections were added by the author.

Following sentences are translated with "DeepL" and some correction was added as well as above. 



原発からの排水が海を温める可能性についての計算は2010年の時点での出力(発電能力)を用いて計算したが、1970年から2010年(下の図では2009年まで示した)までの発電量の推移を示したのが下の図である。1980年から2000年にかけての発電量(発電能力)の増加が大きい事が読み取れる。

The calculation for the possibility that wastewater from nuclear power plants could warm up the sea was done using the power output (generating capacity) as of 2010, and the figure below shows the evolution of power generation from 1970 to 2010 (shown until 2009 in the figure below). It can be read that the increase of generation from 1980 to 2000 is large.


この図の元のデータはウィキペディア(URLは下記)から取り出した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80

そしてこの上昇傾向は上の図で日本海南西部と比べた日本海中部の1970年頃から2010年辺りまでの温度上昇の傾向と(何となく)似ている。

そして、日本海中部の海水面の温度は2011年の原発停止後(5年移動平均の値であるが、約 0.4℃下がっている。

では、それら日本海側の原発群から排出されたエネルギーが実際に海水面の温度を上昇させるほどのものか計算してみた。

計算に用いた元の数値と計算結果は下記のとおりである。

原発からの排出エネルギーは単純に出力を2倍にした。

原発の稼働率はもう少し高いかも知れないが、どこかに65%と言う数値があったので、65%とした。

対馬海流の流量であるが、下記のサイトの中に以下の記述があったので、2.65×106m3/sを用いた。

https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/shindan/sougou/html_vol2/2_2_4_vol2.html

「Fukudome et al.(2010)は、船舶に搭載した超音波式ドップラー多層流速計による1997年2月~2007年2月の観測結果から、対馬海峡を通過する流量は、平均すると2.65×106m3/sで、月平均の最大値は10月で3.10×106m3/s、最小値は1月で2.01×106m3/sであったとしている。」

The original data for this figure was taken from Wikipedia (URL is below).

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80

This upward trend is (vaguely) similar to the trend of temperature rise in the central Japan Sea from around 1970 to around 2010 compared to the southwest Japan Sea in the above figure.

And the sea surface temperature in the central Japan Sea has decreased by about 0.4 degrees Celsius (five-year running average) since the plant was shut down in 2011.

Then, the author calculated whether the energy emitted from the nuclear plants on the Japan Sea side of the island is actually enough to increase the sea surface temperature.

The original value and the results of the calculations are as follows

The author simply doubled the output of the energy emitted from the plant.

The plant's operation rate could be a little higher, but I found a value that is said to be 65% somewhere, so I set it at 65%.

As for the flow rate of the Tsushima Current, I used 2.65 x 106 m3/s because I found the following description in the following website

https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/shindan/sougou/html_vol2/2_2_4_vol2.html

Fukudome et al. (2010) found that the average flow rate through Tsushima Straits was 2.65×106m3/s, with a monthly average maximum value of 3.10×106m3/s in October and a minimum value of It states that in January it was 2.01 x 106 m3/s.


原発からの排熱が対馬海流の深さ200mまでの全体を温めているとすると0.00266℃上昇させていた、と言う結果になった(深さ200mと言う数字も気象庁のサイトから採用した)。

ここでは原発の発電量の2倍のエネルギーが海中に捨てられているとしてエネルギーから計算したが、もう一つよく見かける説明として、100KWhの発電所は7℃温度の上がった排水を70t/s 海に放出している、と言うのがある。
その数字を使って計算して見たのが下の図である。

Assuming that the waste heat from the plant was heating the entire Tsushima Current up to the depth of 200m, the result was an increase of 0.00266°C (the value of 200m depth was also adopted from the JMA website).

Here the author calculated on the basis that nuclear power plant discharges twice the amount of energy generated by a nuclear power plant.

However, there is another common explanation saying that a 100KWh power plant discharges 70 t/s of wastewater with a temperature rise of 7 degrees Celsius into the sea.

The figure below shows a calculation using those values.

若干違うが、大体同じ数字になった。

ただしかし、 0.4℃と0.0027℃では数字に随分開きがある。

海面近くで排出された温水がどの位拡散するのかが焦点だが、この点についても議論して行くと長くなりすぎるので次回に検討したい。

Results are slightly different, but they are roughly the same.

However, there is a significant difference between 0.4°C and 0.0027°C.

The focus is on how much the hot water discharged near the sea surface diffuses, but the discussion on this point will be too long, so the author like to discuss it next time.


2020年9月1日火曜日

トリチウム水は生態系に有害 表層水に捨てるべきではない 2020-09 #1

 2020年の7月31日を期限とした(何回か期限が延長された)パブリックコメント(多核種除去設備等処理水の取扱いに関する書面での意見募集について)に私は下記の意見書を提出した。「熱塩循環の深層水形成域から下降流に放流する」と言う対案を提示したのは、陸上処理を拡充して海洋放出はすべきではないと言う意見ではいずれ汚染水が溢れ出ると言う理由で表層水への放出が強行されると考えたからである。

意見書では、一先ず問題提議の積りで、熱塩循環の説明など詳しい内容は記述しなかった。

しかしその後何人かの人と話した結果、何の説明もなくただ単に「熱塩循環(海洋大循環)(以下、熱塩循環とのみ表記)」と言っても反応が余り良くない事に気が付いた。

そこで、ここでは熱塩循環についての説明を付け加えるとともに、遠洋での投棄に伴う問題点とコストまで話を進めて、今後の処理の議論の一助となることを試みる。

熱塩循環について書いたもの(図)はかなり多いが、下の図は”深層水形成域“まで示されていて使いやすいのでここで用いる事にした。下記のサイトから取り出した。

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~shw/space2/%E7%AC%AC24-28%E7%AB%A0.pdf

熱塩循環は海洋の表層と深層を循環する海水の動きで、1,000年から2,000年かけて循環しているとされる。図には4カ所深層水形成海域が示されているが、ここで深層に潜り込んだ海水が次に表層に戻って来るのは500年後から1,000年後になる。後でも触れるが、仮に処理水の中に残る放射性物質がトリチウムだけだとすれば、トリチウムの半減期は12年なので500年後に表層に戻った時にはトリチウムの放射能は1/2^40(2の40乗分の1)であり、ほぼ0(零)と見做して良い。深海生物には迷惑な話だが、深海にすむ生物の種類と量は限られており、人間への影響は回避できる。

トリチウムの生物への影響については、水と同様に動いており影響はないとする見解もあるが、これは受け入れられない。

スイスの研究者ヘッセ・ホネガーの研究によれば、原発周辺の昆虫の全先天異常・形態異常は原発のない地域の異常の発生率と比べて顕著に高くなっており、これにトリチウムが影響していると推測している。(『「脱ひばく」命を守る』松井英介著 花伝社刊より)

トリチウムはβ各種で海水中に遍在すれば広範囲の魚介類に影響すると考える方がむしろ自然である。

風評被害と言うよりも実際に魚介類が汚染される事を恐れるべきである。

ただし、深層水形成海域まで持って行くと言っても周辺国の了承を得るなど多くの解決すべき問題がある事は否定できない。しかし、後述するように、トリチウム以外の半減期の長い核種が含まれていては了承を得る事は非常に困難であろう。トリチウム以外の核種をとことん除去する事が前提となる。

輸送コストについては、原油や天然ガスの輸送コストを想定すれば、要するに経済活動に甚大な影響を及ぼすほどのものでない事が分かる。さらに言えば、原油や天然ガスを輸送するタンカーは積み込み基地まで空で運行しているのだから、処理水を積んで北極海まで行って帰りに中東やアメリカのフロリダで荷物を積んで帰るようにすれば、処理水輸送の純コストはかなり抑制される。

以上がこのブログを書き始める時点で考えていた内容である。

しかし、これを書くために調べ物をしていたところ、下記のサイトを見つけた。

https://www.foejapan.org/energy/fukushima/200407.html

この中で問題となるのは以下の記述である。

トリチウム以外の核種が高濃度で残存する処理水を他国の近くまで持って行って投棄する事は出来ない。
一方「ただし、東電は海洋放出する場合は二次処理を行い、これらの放射線核種も基準以下にするとしている。」記述もある。そうなれば、熱塩循環に押し込む処理法も受け入れられる可能性はある。

繰り返しになるが、陸上処理だけの主張では、場所が足りないと言う理由で強行突破されてしまう。直球だけでなく「こう言う海洋投棄の方法もある」と言う変化球を交えれば、表層水への海洋投棄と言う愚策に対して多少なりとも押し返す力になると思うのだが・・・。



2020年8月31日月曜日

原発は海を温める!?_その4 Nuclear power warms the sea !?_No. 4 2020-08 #2

今回から日本海中部の海水面の温度上昇に原発が影響しているかどうかの検討を始めるが、今回はその前に、日本海の中の海流の動きを確認しておきたい。

日本海を流れる海流について検索すると多くの図が出て来るが、かなりの図は極端に省略されており、考察に用いるには不都合である。下の図は極端に省略されておらず、また海底の地形も描かれており、分かり易い。

From this time on, the author will begin to examine the effects of the nuclear power plant on the rise in sea surface temperatures in the central Japan Sea, but before I do so, I would like to check the movement of ocean currents in the Japan Sea.

A search for ocean currents in the Japan Sea yields many diagrams, but most of them are extremely abbreviated and are not convenient to use for discussion. The diagram below is not extremely abbreviated and also shows the topography of the seafloor and is easy to understand.


http://cms.sanin.jp/p/matsunoe/aji/3/1/ (鳥取の海の特徴)

図の説明は上のURLで読むことが出来る。また、このサイト自体面白い読み物になっているので、一読される事をお勧めする。

ただ、他の図も含めて誤解されやすいのがリマン海流である。この図を見るとリマン海流も対馬海流と同じ位の流速と流量があるように見えるが、下にあるようにこれは違うと考えた方が良い。

リマン海流の「リマン」とはロシア語で大河の河口三角江)を意味し、ここではアムール川の河口を指す。(Wikipediaより)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%B3%E6%B5%B7%E6%B5%81#

しかし、この中には以下のように書いてある。

>日本海を北上する暖流の対馬海流が北上するにつれて冷やされ、アムール川淡水と混ざり、南下するようになったものであるとされているが、流量が少なく観測データも乏しい為、形成過程については諸説ある。

樺太と大陸を隔てる間宮海峡の最も狭い部分はネヴェリスコイ海峡と呼ばれ、その最も狭い部分の幅は7.3 km、航路の深さは7.2 mである。

http://wikimapia.org/18066051/ja/%E3%83%8D%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%82%A4%E6%B5%B7%E5%B3%A1 (ネヴェリスコイ海峡)

アムール川から流れ込んだ淡水がこのような狭い部分を通り抜けて大量に日本海にまで至るとは考えられない。

また下の図に示されるように、日本海の極前線の北側は等温線が大きく離れており、流速は著しく遅いと考えられる。下記とは異なる気象庁の他のサイトには等温線の狭い所は流速が速いとの記述がある。(https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/maizuru/knowledge/tsushima_current.html

下の図は下記の象庁のサイトにある「海洋の健康診断表」から取り出した。

https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/shindan/sougou/html_vol2/2_2_4_vol2.html海洋の健康診断表 > 総合診断表 第2版 >2.2.4 対馬暖流


http://cms.sanin.jp/p/matsunoe/aji/3/1/ 

The explanation of the diagram can be read at the URL above. The site itself is interesting to read, so I recommend you to read it.

However, the Liman Current is also easily misunderstood as well as other diagrams. In this figure, it appears that the Liman Current has the same velocity and flow rate as the Tsushima Current, but as shown below, it should be considered different.

The "Liman" in the Liman Current means the mouth of a large river (Triangle River) in Russian, and here it refers to the mouth of the Amur River. (From Wikipedia) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%B3%E6%B5%B7%E6%B5%81#

However, it says: "The Tsushima Current is a warm current moving northward through the Sea of Japan, which cooled as it moved northward and mixed with the fresh water of the Amur River to move southward.

>It is believed that the Tsushima Current, a warm current moving northward through the Sea of Japan, cooled as it moved northward and mixed with the fresh water of the Amur River to move southward, but there are many theories about the formation process because of the low flow rate and lack of observational data.

The narrowest part of the Mamiya Strait, which separates Sakhalin from the mainland, is called the Neveliskoi Strait, and its narrowest part is 7.3 km wide and its passage is 7.2 m deep.

http://wikimapia.org/18066051/ja/%E3%83%8D%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%82%A4%E6%B5%B7%E5%B3%A1 (Neveliskoi Strait)

It is unlikely that fresh water flowing into the Sea of Japan from the Amur River would pass through such a narrow part of the strait and reach the Sea of Japan in large quantities.

As shown in the figure below, in the north side of the polar front in the Sea of Japan , isotherms are far apart each other, then the flow velocity is considered to be significantly slower. Other sites of the Japan Meteorological Agency, which are different from the following, indicate that the current velocity is faster at the narrower points of the isotherm. (https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/maizuru/knowledge/tsushima_current.html)


The figure below was taken from the "Marine Health Examination Tables" on the following Elephant Agency website.

https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/shindan/sougou/html_vol2/2_2_4_vol2.html

そうすると前回示した日本海北東部の水は、対馬海流が北上してその多くが津軽海峡と宗谷海峡から太平洋・オホーツク海に流出した残りが間宮海峡を経てゆっくりと戻って来たものと考えるのが妥当なようである。

日本海の3つに区分された海域に対する対馬海流の影響を整理すると下記のようになる。

各海域の位置と形については、このシリーズの「その3」または「その2」を参照していただきたい。

<日本海南西部> 島根県の中央部と朝鮮半島の南端近くを結び対馬の少し北を通る東西の線と新潟県中部から佐渡島を通って西へ伸ばした線で挟まれた海域で、対馬海流が対馬海峡を通り抜けて広がる場所である。

<日本海中部> 新潟県中部から佐渡島を通って西へ延ばした線と渡島半島南部から西に伸ばした線でで挟まれた海域で、日本海南西部を通って来た海流(南東側)と日本海北東部まで行って戻って来た海流(北西側)とで構成されている。仮に対馬海流が原発からの排熱で温められるとすると、玄海原発、さらには高浜原発から始まって日本海に面した柏崎刈羽原発までの一連の原発からの排熱が現れる東側とその影響を少し時間を送らせて保持する西側の温度を測っていることになる。

<日本海北東部> 対馬海流は津軽海峡と宗谷海峡を通ってその大半が太平洋(オホーツク海)に流れ出すが、その一部は間宮海峡から温度の傾向を保持しつつ大陸の沿岸を(ゆっくりと)南下し、その先は日本海中部に至る。

このまとめに基いて、次回に原発からの排熱に海を温めるほどの力があるか検討する。


The water in the northeastern part of the Sea of Japan, as shown in the previous section, is considered to be the result of the Tsushima Current moving northward, with much of it flowing out of Tsugaru Strait and Soya Strait into the Pacific and Okhotsk Seas, and the remainder slowly returning via the Mamiya Strait.

The effects of the Tsushima Current on the three ocean divisions in the Sea of Japan can be summarized as follows.

For the location and shape of each ocean area, please refer to "Part 3" and "Part 2" of this series.

<The southwestern part of the Sea of Japan> is sandwiched between an east-west line running north of Tsushima and a line extending westward from the middle of Niigata Prefecture through Sado Island, connecting the central part of Shimane Prefecture and the southern tip of the Korean Peninsula.

<The central part of the Sea of Japan> is sandwiched between a line extending westward from central Niigata Prefecture through Sado Island and a line extending westward from the southern part of the Oshima Peninsula. If the Tsushima Current is heated by the waste heat from nuclear power plants, JMA is measuring the temperature on the east side where the waste heat from nuclear power plants, starting from the Genkai and Takahama plants to the Kashiwazaki-Kariwa plant facing the Sea of Japan, and the temperature on the west side where the effect of the waste heat from the series of nuclear power plants is maintained with delay for a short time.

<The northeastern part of the Sea of Japan> Most of the Tsushima Current flows out to the Pacific Ocean (Okhotsk Sea) through Tsugaru Strait and Soya Strait, but some of it moves southward (slowly) along the coast of the continent, maintaining the temperature trend from Mamiya Strait, and beyond that to the central Japan Sea.

Based on this summary, we will examine whether the waste heat from nuclear power plants has the power to warm the oceans in the next issue.

Translated with www.DeepL.com/Translator (free version)

Some small errors were corrected after translation with DeepL.






2020年8月18日火曜日

原発は海を温める!?_その3 Nuclear power warms the sea !?_No. 3 2020-08 #1

前回は日本海中部の海面水温の長期変化の図だけ載せたので、今回はその両側、日本海北東部と日本海南西部、さらに東シナ海南部までの変化の図と並べてみた。
日本海北東部では1910年から1940年頃にかけて極端な温度上昇が起こっており、そのため長期の回帰直線が引けていない。しかし、1960年以降は日本海中部の温度変化と似た経緯を辿っている。この2海域に共通して見られる他の日本海側の海域と異なる点は、2010年(2011年)以降温度が上昇していないのと1980年代から2010年にかけての温度上昇が大きい点である。
日本海中部は対馬海流の上流であたる日本海南西部の影響を引きずっても良いはずだが、異なる傾向を示している。それは1980年代から2010年頃までの温度上昇の幅の大きさと2011年以降の温度の下降傾向である。一方1910年から1980年までは概ね似た温度変化である。
他海域温度変化の傾向を平均値で表している日本近海の温度変化では、2011年以降の上昇はかなり大きく、全球の温度変化の傾向とも大体一致している。
日本海中部だけが温度の下降傾向を示している事を1980年代から2010年頃までの温度上昇と併せて考えると、原発の温排水の影響が思い浮かぶ。
先々回(2020-07 #1)に掲載した記事では、原発付近の海水の温度が2℃高くなっていたのが原発の稼働停止と共に低下したと記述されている。
実際に原発の影響があったのかどうか、その可能性について次回以降検討を進めたい。

In the previous article, the author has only included long-term changes in sea surface temperatures of the central part of the Japan Sea. This time, the author has lined up the charts with those for both sides of the central part of the Japan Sea, the north-eastern and southwestern parts of the Sea of Japan, and further to the southern part of the East China Sea.

In the north-eastern part of the Sea of Japan, an extreme rise in temperature occurred from 1910 to around 1940, and as a result a long-term regression line could not been drawn. After 1960, however, the temperature change in the north-eastern part of the Japan Sea followed a similar path to that of the central Japan Sea. The difference between the two regions is that the temperature has not risen since 2010 (2011) and the temperature rise from 1980s to 2010 is large.

The central Japan Sea should be influenced by the southwestern part of the Japan Sea, which is the upper stream of the Tsushima Current, but it shows a different trend. They are: the temperature increase from 1980s to 2010 and the downward trend after 2011. On the other hand, the temperature change from 1910 to 1980 is generally similar.

The temperature change in the seas around Japan, which represents the trend of temperature change in other sea areas, shows a large increase after 2011, which is roughly consistent with the global trend.

The fact that only the central part of the Japan Sea shows a downward trend in temperature, together with the temperature increase from the 1980s to around 2010, reminds us of the effect of thermal effluent from nuclear power plants.

In the previous article (2020-07 #1), it was described that the temperature of seawater near the plant was 2 degrees C higher than the around, but it decreased with the shutdown of the plant.

The author will discuss on this possibility in the next articles.

Translated with www.DeepL.com/Translator (free version)
Some small errors were corrected after translation with DeepL.








海面水温の長期変化傾向(全球平均)

2020年7月30日木曜日

原発は海を温める!?_その2 Nuclear power warms the sea !?_No. 2 2020-07 #2

 先回の新聞記事を紹介した後、その付近の海域の海水面の温度上昇も確認してみた。以前から日本海中部の温度上昇が際立って高い事は気になっていたので、偶々5年前に地球温暖化問題について調べた時の図と見比べてみた。
 上が今年(2020年)、下が2015年のものである。
 どちらも他の海域よりも日本海中部の温度上昇の幅が大きいが、見比べてみて「おやっ?」と思う事がある。他の海域はどこも5年間で温度上昇の幅が大きくなっているのに日本海中部は増えていないのである。
 そこで、日本海中部の温度変化を取り出してみた(一番下の図)。
 他の海域の温度が2010年以降も上がり続けているのに、この海域だけ2011年から下降傾向である。
 この点については次回に詳しく検討したい。

 今回示す図はどれも気象庁の下記のサイトで見る事が出来る。興味のある人は他の海域の温度変化のパターンも見られるとよいだろう。

 After the author introduced the newspaper article in the last issue, I also checked the sea surface temperature rise in the area around the bay. Since I have been concerned about the conspicuously high temperature rise in the central Japan Sea for some time, I compared it with a chart I did a study on global warming five years ago.

 The top one is for this year (2020) and the bottom one is for 2015.

 In both cases, the range of temperature rise in the central Japan Sea is larger than in other areas of the ocean, but I found myself saying, "Wow!" when I compared them. I have a feeling that this is not the case in the central Japan Sea. While the range of temperature increase has been increasing over the past five years in all other areas around Japan, there has been no increase in the central Japan Sea.

 Then, I took out the temperature change in the central Japan Sea (bottom figure).

 The temperature in the central Japan Sea is on a downward trend since 2011, while the temperature in other areas of the ocean has been increasing since 2010.

 The author will discuss this point in more detail in the next issue.

 All of the charts shown here can be found on the Japan Meteorological Agency's website below. If you are interested in these charts, you may want to look at the patterns of temperature changes in other areas of the ocean. 

Translated with www.DeepL.com/Translator (free version)

Some small errors were corrected after translation with DeepL.





2020年7月29日水曜日

原発は海を温める!?_その1 Nuclear power warms the sea !?_No. 1 2020-07 #1

 1年以上ブログの更新をさぼって来たが、下記の記事をきっかけに海の温暖化の話から再開し、地球温暖化の問題について8月下旬まで集中して書いていきたいと思います。
 記事は6月30日付の福井新聞の記事で、原発稼働中周辺の海水温が2℃高くなっていた、と書いてある。一番下に原発周辺の地図を載せた。この調査が若狭湾内のどの辺りで実施されたかは分からないが、かなり広い水域で2℃海水温が上昇するのは大変な事である。

 文中に石炭火力発電所の近くでは原発近くのような変化は見られなかったとあるが、原発では排熱(元の熱量の2/3)が全て海に放出されるのに比べ、石炭火力の場合煙突からの熱の放出もかなりの量になり、海への影響が小さいためであると考えられる。

 I have been skipping blog posts for more than a year, but the following article has inspired me to resume writing about oceanic warming and to concentrate on the issue of global warming until late August.
 The article is from the Fukui Shimbun dated 30th June and it says that the sea water temperature around the plant was 2°C higher during the operation. At the bottom of the page is a map of the area around the plant. We don't know where in Wakasa Bay this survey was carried out, but it's amazing that the sea water temperature rose 2°C in a fairly large area of water.

   The text states that no change was observed near coal power plants as compared to near nuclear power plants. This is thought to be because, compared to nuclear power plants where all the waste heat (2/3 of the original heat) is released into the sea, coal-fired power plants also release a significant amount of heat from their stacks, which has a smaller impact on the sea.


English translation of above article is following.

Tropical fish have settled in the Sea of Japan due to the effluent of nuclear power plants

The area around the Takahama nuclear power plant, the fish disappeared after shutdown of the plant

  Tropical fish had become established in the vicinity as the sea was warmed by effluent from the Kansai Electric Power Co.'s Takahama nuclear power plant in Fukui Prefecture, Prof. Reiji Masuda of Kyoto University's Maizuru Fisheries Laboratory published the results of his research in the online scientific journal PLOS ONE by June 29. Juvenile fish brought in from the south by ocean currents are thought to have successfully overwintered, but they disappeared when the plant was shut down after the Great East Japan Earthquake.

  During the operation of the nuclear power plant, the seawater temperature around the plant was 2°C higher, which is equivalent to conditions around 2050 when global warming has advanced. Mr. Masuda said, "It's not a good thing that the habitat has expanded. If a lot of nuclear power plants operate in the narrow Sea of Japan, the environment will change drastically, including a decrease in fish and seaweed that originally existed," he said. He called attention to the effects of localised global warming caused by the thermal discharge of nuclear power plants.

  From 2004 to 2005, Mr. Masuda conducted a diving survey in the sea near the Takahama Nuclear Power Plant in Wakasa Bay during the winter. During the operation of the plant, the discharge of water at the site was seven degrees Celsius warmer than normal, which increased the number and variety of fish, and tropical fish, such as the Atlantic wrasse and the thunderhead wrasse, which normally cannot overwinter, were also found in the water.

 When the Takahama nuclear power plant was shut down in 2012, the water temperature dropped and returned to normal, and tropical fish died out or were no longer seen.

 For comparison, the same bay was also examined near a coal-fired power plant and in waters without waste heat facilities, but no such change was found near the plant.

Translated with www.DeepL.com/Translator (free version)

Some small errors after translation with DeepL were corrected by the author.


次回に続く
Continued to the next.